乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
 そんな穏やかな休憩時間が終わろうとする頃、不機嫌な顔と上機嫌の顔とがやって来た。

 いち早く気がついたなずなが、その二人から目線をそらす。中々入り口の扉を開けようとしないなずなにかわり杏樹が扉を開ける。

「秘書課の五嶋です。お客様を…きゃっ!!」

 以前、杏樹の両肩に強く揺すってきた女性だ。杏樹が五嶋から話の内容を聞こうとするより先に、杏樹の方に五嶋がバランスを崩し、倒れかかってくる。とっさに五嶋を抱き止めると、五嶋を突飛ばしたであろう女性がすっと入っていた。

「失礼。…連条さん!先程電話した時は、もう近くまで来てましたの。お会いしたかったわ。」

 五嶋を突飛ばしたことには触れず、一目散に雅輝のデスクまで歩いていく。

「大丈夫ですか?五嶋さん…。」

「えぇ……。ありがとう。何よ、あの女。」

 杏樹にお礼を言いながらも目線は女性を見ている。不機嫌な様子で、身なりを整えている。

「…結城さん。何しにここに?」

 雅輝は、淡々と女性に話しかける。優しい言葉も態度でもなく、声にも抑揚がない。

「まぁ私のこと結城さんだなんて、あやめとお呼び下さい。私と連条さんの仲でしょ?」

 その様子は、みんなは怪訝な顔をし見ている。

 杏樹は、その顔を見てはっとした。今日は、ワンピースを来ているため初めは気が付かなかったが、初めて雅輝のスーツ姿を見たときに一緒にいた和服美人だ。

 誰もお茶を出さないため杏樹が準備しようとしたときに、ふと、雅輝が目に入った。

 髭を触っている。

 杏樹は、あやめが雅輝に手を伸ばした際に、すぐに後ろに下がり距離をとったのを見逃さなかった。

 時計をみると11時になろうとするところだった。

「ねぇ先程も言いましたけど…ラグジュアリースイートとって参りましたの!私、連条さんとは、ゆっくりお話ししたいの。もちろん、朝まで…ベットの中で…が、希望なんですけど…。」

 ところ構わずそんなことを言うあやめに皆が不快感を露にし、雅輝も困っている。

 五嶋が杏樹の横でイライラしているのが分かる。

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