乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
 ウェディング企画室に戻り、さっそく雅輝はみんなに意見を求める。

 先程の意気消沈した顔ではなく、副社長の顔に戻っている雅輝の姿を見て、皆が安堵する。

「…杏樹ちゃん、なにしたのよ?」

「へっ!?」

「ちゃんと副社長の顔に戻ってるからさぁ。」

「……私はなにも。」

 なずながこそっと話しかけてくる。"チューでもして、機嫌なおしたのかと思ってさ。"とニヤニヤとからかわれ、あながち間違いじゃないため、目を泳がせてしまう。

 その姿を雅輝にみられ、思わず目を逸らしてしまうのをまたしても、なずなに見られ、杏樹は赤くなった。

「ちょっと立花さん、企画考えましょうよ?さっきから百面相してないで…。」

 ゆずるに言われ、申し訳ない気持ちになりながら話し合いに参加するのだった。

 話し合いの結果、和風ホールについては、今は引退しているが、着物や帯に絵を描いていた職人ー白愁ー先生にオファーし、帯を装飾としてあしらったホールを目玉にすることになった。

「しっかし、白愁先生って言えば、気難しくて有名ですよね?俺が営業かけるんっすか?」

 ゆずるが雅輝に投げ掛ける。

「そうだな。一席設けようか?みんなも一緒に。」

「それがいいです!そうしましょう!」

 一人で営業したくなかったのか、雅輝の提案に顔が明るくなり、"やる気出てきた~!"とガッツポーズを取り喜んでいる。

「そんなに気難しいの?」

「杏樹ちゃんは知らないかも知れないけど、ちょー気難しくて、些細なことが本当、気になる人なの!」

「へぇ。」

「でも、作品は天下一品よ?」

 なずなと杏樹が話してると、後ろから第三者の声がし、二人はビックリして振り替える。

「ゆ、結城さん!?」

 そこには専務に連れられたあやめの姿があった。その横には、年輩の男性の姿があった。杏樹たちは、その男性が一目であやめの父親だとわかった。あやめに対して、威厳を放ち、専務にはにこやかに接しているからだ。

「専務、此処に来られては迷惑です。」

 雅輝がやんわりと、伝えるが、怯むことなく、ズカズカと入って来る。

「白愁先生のことは、私も父もよく存じておりますの。お力になれるかと思います。」

「副社長、次は先に出し抜かれることがないよう、ここはあやめさんに力を借りたらどうでしょう。」

「あやめが君の力になるよ。うちの贔屓にしている料亭を用意しよう。」

 三人それぞれに雅輝に詰めより、渋々、お願いする形になったが、その顔は険しく、終始髭を触る雅輝を杏樹は眺めていた。
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