乙女野獣と毒舌天使(おまけ完結)
ー悠一の家ー

「ねぇ、愛してるってフランス人は軽々しく言うもんなの?悠ちゃん?」

「はぁ!?」

 久しぶりに二人でゆっくりご飯を食べてまったりDVDを見ているとなずなが、不意にそんな事を言い出した。

「悠ちゃんは、私意外に言える?」

「いや、言わないだろ。」

 なずなはそれっきり黙ってしまった。心配そうに見る悠一に"気にしないで、聞いてみただけ。"と話すが、心ここに有らずのなずなを悠一は優しく抱き締めた。

 なずなは一人では抱えきれず、悠一に、先日の杏樹の話をしてみたのだ。悠一は、驚くが何も言わず、抱き締める力を強くした。

「杏樹ちゃんに聞いてみたら?」

「…うん、そうしたいんだけど…。」

「それが一番だよ、俺たちがヤキモキしてても始まらないし。」

 悠一の言葉になずなは渋々納得するが、気持ちはおさまらず、久しぶりの二人だと言うのに、気分が高まらないなずなだった。


ー連条家ー 

 何度かけても留守番電話になる携帯に、何度も何度も電話をする雅輝の父の姿があった。

 確かに二人で約束をした。自分には息子がいたし、クリスには娘が産まれたと聞いていた。でも、自分の妻も亡くなり、クリスの妻も何年か前に何年か前になくなり、それ以前にラポールを設立してから暫くたってから、二人は会っていない。

 その会っていない間に、自分の娘を手放したのだろうか。何があったのだろうか。

 クリスの株が向こうの手に渡ってしまったら、会社や社員が大変なことになるのは目に見えている。しかし、だからといって、やっと雅輝が心から愛せる人を見つけたと言うのに、会社のために、社員のために、雅輝にそんな酷なことをお願いするわけにはいかない。

 そう思うと息も出来ないくらい苦しくなった。



ー某ホテルのsweet roomー

 すやすやと抱き締め会いながら眠っていた二人は、ケータイの着信音で目が覚める。

 雅輝がケータイに手を伸ばし、不機嫌になりながら電話に出ると、すぐに顔色が変わった。杏樹は心配そうに覗きこむ。

 電話を切るとすぐに、杏樹を見て、一言呟いた。

「親父が倒れて、病院に運ばれた。」

 気丈に振る舞おうとするが声が震えており、杏樹を抱き締める。抱き締められ手も震えていて、杏樹はただ抱き締め返すことしか出来なかった。



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