俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
「笠原、おーい」
ふいに呼ばれる声がして、『はい』と、反射的に返事をすると、ずっしりとした重みが頭に掛かった。
ぐえっ。と、可愛くない声が出て、ケラケラ笑う加藤が頭に肘を乗せていた。
「やっぱり笠原いいわーこのサイズ堪んない。なんだよ、ぐえって。おもしれー」
「はいはい。ありがとうございます。で、なんですか?」
「おっ。なんか冷たいじゃん、どうした?何?噂の彼氏様は今日はいないの?」
「はいっ?なんですか?噂って」
「えーーーどこぞやの御曹司捕まえたって聞いたぞ。やるなぁ笠原。なんだよ俺に内緒で寂しいなぁ。紹介しろよ」
クスンクスンと、でかい図体で可愛くない泣き真似をしながら椅子に座っている私に、後ろから手を回して抱きついてくる。
相変わらず彼のスキンシップは度を超している。
その手を軽く外し、彼の体ごと押しやる。
「相変わらず近すぎます。離れてください。小早川君は三嶋課長に連れられてお昼まで出てますから、又後でご挨拶しにいきますね」
「へぇ。彼氏の話は否定しないんだ。
━━━━笠原、昼は?一緒に食べようぜ」
「今日は華ちゃんと社食です。じゃあ一緒に食べますか?小早川君も来ると思いますよ」
「分かった。じゃあ昼な」
周りの目をもう少し気にしてほしい。
桃山さん達の視線がこちらに向いている気がする。
はぁ。
またかな……。
好きにちょっかいだけかけて、加藤はフロアを出ていった。
彼のせいではないかも知れないが、彼のせいで面倒な事になるのは確かだ。
さて、小早川君と会うとなるとお昼も面倒な事になりそうだな。
とにかく平穏無事に過ごしていきたい杏にとって、ここ最近は心穏やかになれない日々が続いている。
なんか、疲れたなぁ……。