俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
待ちかねてたように加藤が12時ぴったりに呼びに来た。
はいはい。と、呟くように返事をしてドアに立つ彼の元へ急ぐ。
食堂へ向かう間も加藤は私の頭を撫でたり、肩に肘掛けのように腕をのせたり、スキンシップを図る。
それを一つ一つ押し退けて、加藤から距離をとるように手をつっぱった。
「近すぎます、離れてください」
「ナンでだよ。いいじゃねぇか少しくらい」
少しは周りの目を気にしてほしい。
加藤が出張で出ていたのは一年半程だ。その間に入った去年と今年の新入社員達は私たちの事を知らない。知っていたとしても、無駄に高い密着度は二人の親密性を表していて、彼の事を好きな人たちから面倒くさい言いがかりをつけられていたものだ。
そこに何の事実も無かったのに。
いつもより早くついた食堂にはまだ華は来ていなかった。
食事を注文する加藤に席を取っておくと伝え、いつもの場所に座る。
ホッと一息つき、ざわざわと一層騒がしくなった入り口付近に目をやると、恭一と華が二人揃って入ってきた。
いつも似たような席に座っているためか、二人ともがこちらをキョロキョロし、目が合うと嬉しそうに手を小さく振って、食事の注文に並ぶ。
その間も楽しそうに話し、ときおり恭一の手が華をこずく。
「みて、小早川君と川嶋さん。やっぱりお似合いよね」
「将来会社を継いだとき、川嶋さんなら秘書だしずっと一緒に働けるもんね」
チラリとこちらを見ながら、聞こえるように話していく。
ズキリと何故か心が痛むのは、ちゃんと分かっているからだ。
━━━そんなこと、言われなくても知ってる。
いまなおクスクス笑う彼女たちにしっかり目を合わせ、お疲れ様です。と、笑顔で声をかける。
大抵こうすると慌てて去っていくのは相手の方だ。
ふんだ、逃げるくらいなら言わなきゃ良いのに。