俺様御曹司による地味子の正しい口説き方

抱き締められて、頭が少しずつ冷静になってきて周りの声もキチンと聞こえるようになってきた。
近くで話声もする。
定時を過ぎたとはいえ月末の忙しさに残っているものも多いだろう。
よく考えたら、こんな目立つところで何をしていたんだと一気に羞恥心が襲う。

「ご、ごめんなさい」

慌てて恭一の腕の中から逃れようとするも強く抱き締められていて身動きがとれない。
頭上で『チッ、』と舌打ちが聞こえたと思ったら、腕を引かれて給湯室横の小会議室に連れ込まれる。
本当に今日はなんなんだ。

こんな時間だ。
誰も使っていない会議室に入り鍵を閉め、再び強く抱き締められる。
あんなに嫌だと感じた嫌悪感が何故か全く感じなかった。
それどころかホッとする。
思わず頬を刷り寄せてしまう。

慣れ、って凄いな。

暫くそうやって身を寄せていると、恭一が口を開いた。

「何も、されなかったか」

「う、うん。大丈夫、ありがとうございます」

「すげぇ、焦った」

「………………うん、ごめん」

「加藤に触られてる杏見て、ムカついた」

「………………うん」

「頼むから、俺のだって自覚して」

「………………う、うん?」

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