俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
頭を後ろに仰け反り、その手から離れようとしても、ガッチリ捕まえられて逃げられない。
えっ、、、や、やだ。
ほんの数十センチと言うほど近づかれ、その近すぎる距離に過剰に反応してしまう。
「化粧が濃いわけでもないんだな。肌も綺麗だし。すげぇ、モチモチじゃねぇか」
頬にある両手を左右に傾けて化粧具合を見たと思ったら、頬を柔らかく揉み始めた。
「ひゃっ、、、や、やめっ」
加藤の過度なスキンシップはいつもの事のはず。なのに、今感じるのはゾクゾク迫り上がる嫌悪感だ。
加藤の両手首を掴んで引き離すように力を込めてもびくともせず、ますます近づく顔に、じわりと目尻が熱くなる。
近くで息を飲む音がした。
「あいつもこれにやられたか。━━━━堪まんねぇな、コレ」
触れそうなほど近くまで来た加藤に目を開けていられなくて、ギュッと目を閉じる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ━━━━━━━!!!!
ダンッ!!と、給湯室の入り口から大きな音がして、加藤の動きが止まった。
「チッ、、、」
と、入り口から大きな舌打ちの音が響く。
肩で息をしている恭一が足音をたてて近づいて、加藤の手の中にいる私を強く引っ張りその腕の中に抱き締めた。
小さく震える体に気付いてくれたのか、抱き締める腕に力が入った。頭が胸に押し付けられ、恭一の心臓が凄い早さで動いているのが聞こえる。
探してくれていたのだろうか……。
「ハハッ見付かっちった。悪かったな、笠原」
悪気もなしにあっけらかんと言い放つ。
加藤に触られて冷たく冷えていった体のあちこちが恭一に抱き締められて温かく熱を持ってきたのが分かる。
嫌な音で煩かった心臓が、温かくホッとしていく。
………………落ち着く。
「次はねぇぞ……」
そのまま給湯室を出ようとしていた加藤に向かって聞いたことのないような低い声で恭一が呟く。
「チッ、、、」
と、舌打ちを残して加藤は出ていった。