俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
お風呂のなかで深く深呼吸をして、覚悟を決めた。
ドライヤーを取り出して、心のなかでお借りします、と頭を下げ髪を乾かす。
この音で、私がお風呂から上がった事も伝わるだろう。
あっという間に髪も乾き、ドキドキしながらリビングに向かうと、テレビの音も何もなく、小早川君でさえも居なかった。
あれ?
キョロキョロしても人の気配がない。
ホッとしたのと、誰もいない不安が入り交じる。
バタン、と寝室の方から音がして小早川君が出てきた。
「ごめんごめん。杏、こっち」
以前彼に買ってもらって揃えた部屋着を身に纏い、手を引かれながら寝室に足を踏み入れた。
ドアが閉まる音とがして、部屋の電気もパチリと消される。
嫌でも暴れだす心臓に、平常心じゃいられない。部屋が薄暗くて良かった。
カーテンが引かれておらず、満月に近い月明かりが部屋を照らしていた。
カチコチに固まる体を解すように小早川君の手が私を包む。
フッと笑い声が漏れ、『緊張しすぎ……』と頭から声がした。