俺様御曹司による地味子の正しい口説き方
何もありませんように。と、両手で拝みながらロッカーを開ける。
何かあったとしても私物は入れてないから汚されるくらいしかないけれど。
ガチャリと開けたその瞬間、あまりの衝撃に『ヒッ、』思わず声が出てドアを乱暴に閉めてしまった。
ドッドッドッと、心臓が痛いくらいに大きく鳴る。冷房が効いている筈の更衣室で冷や汗が落ちるのが分かった。
浅く深呼吸を繰り返し、恐る恐るもう一度ロッカーを開いてみた。
隙間から覗くように中を確認して、見間違いではなかったことに落胆する。
中に掛かっていたのは、私のものではない誰かの白いシャツ。誰の物かも分からない物があるだけでも気持ちが悪いのに、それはビリビリにハサミやナイフのような鋭利な刃物で切り裂かれていたのだ。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
何でこんな事になってしまったんだろう。
私が何かした?
ただ、恭一君を好きになっただけなのに。
仕事も今まで通りしてきたはずだ。
怖い。
嫌だ。
ロッカーを開けたまま、抑えきれなくなった感情が溢れだし、ポロポロと涙が頬を伝う。溜まりに溜まったフラストレーションが決壊して、その場で動けなくなってしまった。
それでもこんなところで泣き続けてもいられない。こんなところを見せるわけにはいかないのよ。