うっせえよ!
「お前、釣りしたことあるのか?」
……あっ。
「その様子だとないみたいだな……。」
「あ、あはっ、あはははっ……。ザリガニなら釣ったことあるんですけどね……。ほら! 糸にサキイカを括り付けて、こうやって……。」
誠司さんは頭を抱えた。
よくよく考えたら私の地元は長野の山奥で、海がなければ、漁船にも乗ったことがない。竿さえ握ったことがない。
「釣りを知らないでどうやって釣り雑誌の連載持つ主人公を描くんだ? え? まさかお前、海に行って竿持ってたらマグロでも、カツオでも、鮭でも、ウニでも釣れると思ってんじゃないだろうな?」
「ち、違うんですか?」
ため息をつくところを見ると、どうやら違うらしい。
誠司さんはカッターシャツを脱いだ。
「有休をとる。お前も早く着替えろ。」
「着替えるって、どこに行くんですか?」
「海だ。」