うっせえよ!





ビジネスホテルにチェックインした後は、道後温泉。



それにしても、男女のカップルで温泉旅行という風潮に私は日々、異を唱えていた。



一緒に入れるわけじゃない。二人で来たらお風呂の時は一人で、知らない人と大きなお風呂に入るのは正直抵抗があった。



しかしこの道後温泉。素晴らしい。普段、シャワーで済ます私だが、たまには大きな浴槽に浸かるのもいい。



効能なのか、日々の仕事、ストレス、移動中の疲れが一気に取れて、上がる頃には、穏やかな気持ちで、浴衣姿の誠司さんと対面した。



「馬子にも衣裳か。」



私の浴衣姿を見た誠司さんは、ぶっきらぼうにそう言った。まったく素直じゃない。



「似合ってるぞ、浴衣。」



くらい言ってくれたら、私は彼に抱き着いておどけて見せた……かもしれない。



ただ、私生活がダメなんだよな、この男。本当に惜しい。




< 116 / 252 >

この作品をシェア

pagetop