うっせえよ!





やがて、花の名社はお盆休みに入り、私と誠司さんは24時間一緒にいる状況になった。



私は書き、誠司さんはそれを一枚一枚赤線を入れていく。これは、「朱入れ」という作業で、作家にとっては大事な作業でもあり、めんどくさい作業でもある。



原稿を読み直して、書き直す。私はこの作業が大嫌いなのだ。



なんでもそうじゃないだろうか。違うと指摘されたところを何度も何度もやり直させられるのだ。



こんなに腹が立つこと、めんどくさいことはないと思う。



誤字脱字くらいならいいのだが、誠司さんのように真面目な人は、びっしりと、赤ペンのインクが切れるほど書く。



人が見たら、黒と赤、一体どっちが原稿の文字なのかわからなくなるほどだ。



しかし、これは編集者が妥協しないからこそ、作家のことを真剣に考えてくれているからこその朱入れなのだ。



だから、私は文句は言わない。ただし、おいそれとすべてその通りに直すこともしない。議論をして、一番良いところを見つける。




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