うっせえよ!
原稿がまとまってきて、それからお盆明けのある日、藤原が私のマンションにやってきた。
幸い、誠司さんは出社していて、鉢合わせることはなかった。
「先生。原稿お願いします。」
原稿というのは、打ち切りまっしぐらのあの原稿のことで、恋愛の短編を書き始める前からすでに書き上げていたものだ。
本当は、締め切りの20日まで取っておくつもりだったが、まあ、いい。お母さんが倒れて大変だったようだし、素直に原稿を渡しておいた。
「頂戴いたします。」
原稿を受け取った藤原は、ソファーに腰かけ、しかし背もたれにはもたれず、ガラステーブルの上に原稿を最小限の範囲で広げ、じっくりと読んでいた。
「どう?」
「なかなかいい感じです。」
藤原は申し訳なさそうに言った。その表情で、察しがついた。
「あと、何話?」
「はい?」
「打ち切り決まったんでしょ?」
藤原は静かに頷いた。