うっせえよ!





隣でハンドルを切る誠司さんは、緊張気味で、信号待ちの度にバックミラーでネクタイをチェックして、「変じゃないか?」と訊いてくる。



気持ちはわかる。でも、毎回毎回訊かれると、誠司さん自身に「変。」と言いたくなる。



でも、そんなこと言ってしまうと、私たちは結婚をする前に、急カーブの崖下に落っこちてしまうだろう。それくらい、誠司さんは緊張し過ぎていた。



「誠司さん、大丈夫ですよ。私の父さん、確かに剃り込み入ってたり、空手で黒帯持ってたり、学生時代、修学旅行でパトカーひっくり返したりしたことありますけど、今では普通のお父さんですから。」



そうやって、安心させようとするのに、誠司さんの顔はみるみる青ざめていくから不思議。



私の言葉が信じられないのか。それともただ車酔いしているだけなのか。



わかんない。でも、なんかやっぱり変。




< 175 / 252 >

この作品をシェア

pagetop