うっせえよ!
誠司さんは、私の実家の近くのコンビニの駐車場で車を停めた。
「いいか? おさらいしとくぞ?」
「またですか? もうかれこれ50回目くらいですよ?」
「練習は何度やっても裏切らないだろ? ほら!」
「もうっ……わかりましたよ。」
「まず、お前ん家の玄関先で、頭を下げる。それから、お前のご両親が出てくるだろ? それから『はじめまして、お義父さん、お義母さん! 娘さんとお付き合いさせていただいております、柏原誠司と申します。』と言う。それからそこで、お前のお父さんが……。」
「キミに『お義父さん』などと呼ばれる筋合いはない!」
「そこで、俺が『いえ! お義父さん!』と食い下がる。すると?」
「すかさず下段蹴りが飛んでくる。」
「そう。そして俺の大腿骨が砕けて……って、違うだろ、馬鹿!」
あっはっはっはー! やっぱり何度やっても面白い。
最悪のシナリオ作りからの誠司さんの反応。
「いいか? もう一度やるぞ?」
「もういいですよ。大丈夫ですよ。私だって父さんに仕込まれて、小さい時からバットを手刀で折ったり、瓦割りさせられたりしてますし。いざとなったら、私が誠司さんのことを守りますよ。」
「本当か!? っていうか、本当なのか!? お前、そんなことできるの!?」
「嘘に決まってるじゃないですか。馬鹿だなー、誠司さんは。」
「不謹慎だぞ、馬鹿野郎!」
ああ、もう最高。ここまで動揺する誠司さんを見てると、これでもかって言うくらいからかいたくなる。
私ってやっぱりS?