うっせえよ!
「とにかく、そういうことなら行かないから!」
明美は席を立った私の腕にしがみついた。
「待って! 今日来るのはいつも施設に往診に来てくれる若い医者なのよー! なかなかいい男でさー、ただでさえ出会いが少ない私にとって、これは千載一遇のチャンスなのよ! ね? おねがーい!」
「何が『おねがーい!』よ。勘弁してよね。私は諭吉大先生以外興味ないんだから。」
「そんなこと言わないでさー。ほら、考えてもみてよ? 医者が連れてくる友達ってことは、医者でしょ? お金持ちばっかじゃん!」
まあ、その可能性は十分あるだろう。そこでいい感じになって、結婚でもすれば、好きな小説を思い思いに書いて行ける。藤原に原稿を押し付ければ、年に1冊くらいは本になるだろう。
悪くない。
「わかったわよ。行く。行けばいいんでしょ?」
「やったー! ばんざーい!」
一度、苦言を呈した以上、素直にはなれない。私は今、人目もはばからず万歳をしている明美よりも恥ずかしい人間かもしれない。