うっせえよ!





書けと言われると、書けないのが作家だ。



これは、部屋の掃除をするタイミングと同じで、自分のペースがあって、それを乱されると、かえってはかどらないことに似ている。



事実、家に帰るとパソコンもつけずに、着替えてシャワーを浴び、眠ってしまった。穏やかな午後の光に、クーラーの設定温度が追い付かなくなったことで、起きた。



暑さで酷く喉が渇いていて、500mlのミネラルウォーターを一気に飲み干したほどだった。



作家は活動的なニートじゃないかと思うことがある。雑誌の取材も月に一度あるかないかだし、打ち合わせも週に一度あるかないかだ。



世間でいうところの平日が、作家にとっては作品に時間を費やす時間であって、それも私のように自分のペースで仕事をするタイプの作家にとっては、曜日はあってないようなものだ。



ああ、今日は休みだから午前中はゆっくりして、午後からショッピングにでも行こうかななんて休日がないのだ。



暇さえあれば、小説は書ける。こうしてる今だって小説を書ける。書ける時間が莫大にあるからと言って、その時間すべてを執筆に費やすには、集中力が足りない。



まあでも、私の場合は少しマシかもしれない。「エゴイスト」のおかげで本屋に行けば大木りんの名前で「耳」がある。その「耳」は、世間で大木りんイコール作家であるという証明書のようなものになる。



でも、同じ時期にデビューした人の中には、未だにコンビニで深夜のアルバイトをしながらなんとかやっている人もいる。芥川賞を獲っても、その後パッとしない作家だっている。



流行作家。でも、流行なんて科学と同じで日々進歩して、後発品ができる。古き良きものは長く残るけれど、ただ古いものは忘れられていく。



私の毎日は、忘れられないための足掻きに近いのかもしれない。




< 56 / 252 >

この作品をシェア

pagetop