うっせえよ!
タクシーで居酒屋に着くと、店の前でスーツ姿の藤原が待っていた。
藤原は、私の連載している長編の担当編集者で、花の名社の中では柏原さんの次に付き合いがあった。
入社は私のデビューよりも遅く、歳も私の一個下の24歳ということもあって、私にどこか遠慮があるらしい。
作品に対しても誠司さんと違って、融通が利くし、私が書きたいものを書かせてくれる。それはそれでいいことなのだが、口出しが一切なく、イマイチ物足りなさを感じるのだ。
「まったく、花の社の文芸部にはちょうどいい編集はいないわけ?」
私の心のうちなど知る由もない藤原は、ポカンと口を開けたまま「はい?」と気の抜けた声を出した。