私のいとおしい残念な男達


「え、仕事関係?」

私が席に戻ってからもそっちのテーブルの方に座り話し込んでいる様子だ

仕事関係にしては、女性との方と話が盛り上がっているみたいだけど……

名刺を交換していたスーツのリーマンとは違って、一緒にいる女性はラフにジーンズ姿で会社帰りとは思えない

女性の方も細めの黒縁眼鏡をして、キャスケット帽で顔がよく分からないけど、長い緩めのソバージュが遠目でも手入れがしてある感じがする
ラフな服装なのに、センスがある……いや、たぶん彼女の隠していてもいい女の雰囲気がそう思わせているんだ

若く見えるけど、年齢は同じくらいかな?

「あの人、どっかで見た事ない?」

舞子が目を凝らして見ていると、モモちゃんが「あっ、そうだ」と思い出したように声を出した


「ほらっ、去年流行ったドラマの……確か」

思い出したくて眉間に皺を寄せ、頭を抱えながら「こい、わすこい……」と唸っていた

「【忘れた恋を捜しています】だったっけ?」

阿部君が答えを出すと、モモちゃんの顔がパッと閃いた

「そうっ、【レス恋】の妹役で出てた日向瞳子
(ひなたとうこ)だっ!」


へぇ……女優さんなんだぁ
じゃあ綺麗なのも分かる。オーラがあるんだな


「でもさぁ、なんか知り合いっぽかったよね、日向瞳子と黒木さん」

芸能人に一瞬心弾ませたモモちゃんだけど、また元の黒木を取られた時の顔に戻った


「知り合いっぽかったの?でも黒木の仕事上、女優さんと知り合いなのも不思議じゃないんじゃない?」


< 194 / 410 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop