私のいとおしい残念な男達
水野君の落ち着いた言い方にも動じず、もう片方が掴む水野君の手を、黒木が私から振りはなす
「黒木っ!」
そのまま引き摺られるようにして、その個室の出入り口の扉に向かう
大体、確かここは会員制のラウンジだったはずなのに、どうやって入ってきたの?
「黒木待って、どうして……」
「波瑠君、どうだった?」
私を連れてラウンジから出たところで、待っていた彼女の前で立ち止まった黒木
「悪かった、智子ありがとう。今度また奢るから」
「いいえ、またお役に立てて何よりだわ」
「…………」
日向瞳子……?なんで彼女が?
訳が分からず黒木に腕を掴まれたまま、彼女の前を通り過ぎる
軽く一礼したが、私に向けた彼女の顔は意外にも目を細め背けられた
「…………」
エレベーターに乗り込んでも腕を離さないで、黙ったままの黒木
見上げれば、やっぱり不機嫌に眉を吊り上げ階数のランプが下がって行くのを見据えている
「黒木………」
いい加減この状況に、ふつふつと腹立たしさが込み上げてくる
1階に着く前に掴まれた腕を引いた
「どうゆう事か説明して」
見上げたままの黒木の顔が、ゆっくりと視線だけ降りてくる
その瞳に一瞬怯んだが、負けずに目を逸らさず睨み付けた