私のいとおしい残念な男達
「小夏?」
『………』
向こうからの音がない
「今どこにいる?外か、それとも家か?」
こっちの方が駅の終電前の騒然とした周りの雑音で聞き取り難いだけなのか?
『…………』
通じているはずの電話口から、
全く音のないことに不安がつのる
「………小夏?」
だか、次の瞬間溜め息をつきながら発せれたのは、低い男の声だった
『すみません、水野です。彼女は今電話に出られないものですから……』
「!!」
『飲み過ぎて眠ってしまってね』
心なしか電話口からの声は少し笑みを感じる
「どこにいる、迎えに行くから場所を教えてくれ」
『いえ、大丈夫です。もう熟睡してますから、
…………僕のベッドでね』
「…………っ」
電話口の奴の言葉に、正直腹わたが煮え返りそうなのを、かろうじてのどの中に押し込めた
「酔いつぶれてるのか?」
『そうですね。すっかりお酒に呑まれてしまって、仕方ないのでウチに……』
「だったらそれ以上そいつにさわるなよ」
思いの外感情をその場で抑えて
周りの駅構内の雑音がまるで耳に入らないほど、意識を電話口に集中し、のどの奥から声をだした
『…………』
携帯を持たない左手の拳にギュッと力を入れ、もう一度込み上げる感情を抑える様にスッと息を吐いた
「あんたは知ってるよな、そいつが前に襲われかけた事…………」