哭く花

恥ずかしさから、沈黙が流れる。

はあ、と息をついた先生は、ほんのりお酒の匂いがした。

「…先生、酔ってる?」

軽く振り返って見た先生の顔は、のぼせたせいか、お酒のせいか、ほんのり赤かった。

「んー酔ってないよ、」

先生はそれきり、話したくなったら話していいからね、と目を閉じた。

「じ、じゃあもう話しても…いい?」

先生は少し驚いたあと、いいよ、と言って軽く目を開けた。

きっと恥ずかしい話でも、お酒を飲んでる先生なら忘れてくれているはず。

そう考えた私は、心の内に秘めてきたあれやこれを、すべて打ち明けた。

夢ちゃんのこと、泣き虫なこと、昔の話、

そして、お父さんとお母さん、弟のこと。

すべての話を先生は、柔らかい顔で受け入れてくれて、

家族の話をした時に、止まらなかった涙を

暖かい手で拭ってくれた。
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