隣にいたのはあなただった

しかし菜穂ちゃんは首を振った。
「この子ね、サッカーの推薦が決まって遠い大学にいくの。もし付き合えたとしても遠距離なんて無理だと思うから」
菜穂ちゃんの表情は暗い。
しかし流石菜穂ちゃん。付き合ってから先の事を考えられるなんて、私より大人だ。私はどちらかと言うと思ったらすぐに行動してしまうから、今までの恋愛は失敗の方が多い。
でも…
「でもね、今はそんなこと気にしなくていいと思うなぁ」
私は自然と言葉にしていた。
「え？」
菜穂ちゃんは不思議そうな顔をして私を見つめる。
「今自分の中で無理矢理気持ちを押し殺すくらいなら、気持ちを伝えた方が絶対にいいよ。遠距離になるなんてその後の話なんだから。遠距離になっても続くカップルはどこにでもいるよ？そうやって告白しないでもう会えなくなった時に後悔する方が、よっぽど辛いと思うけどなぁ」
そうしてニコッと笑ってみせる。
菜穂ちゃんは何度か俯きながら頷いた。
よしよしと菜穂ちゃんの頭を何度か撫でて、私は花火に火をつけた。
暗い景色に赤い光がよく映える。
「私ね、お兄ちゃんと雛子ちゃんの事ずっと憧れてたんだ」
その言葉にギョッとして菜穂ちゃんを見る。
「え、何が？」
「だって、生まれた時からの幼馴染なんて素敵でしょ？お互いの事をよくわかってて、仲良しで。大人になってもそんな関係が続いてるってすごい事だと思うよ？」
それは確かにそうかもしれない。大輝の好きな食べ物も、嫌いな食べ物もわかる。口は悪いけど、すごく優しいのも知ってる。たぶん、あいつもそう。私の事は何だって知ってるはず。
「まぁそれもそうかもしれないね〜家族みたいなものだし。それは菜穂ちゃんもだよ？」
「ん〜それはちょと違うかも」
菜穂ちゃんは意地悪そうに笑っている。何だか少し楽しそうにも見えるが。
私は言っている意味がわからなくて首を傾げた。
「少なくともお兄ちゃんは家族とは思ってないと思うよってこと」