水底の鳥籠
旅行なんて久しく行っていない気がする。そもそも出かけるのが嫌いだから、当然と言えば当然なのだが。誰に誘われても「仕事が忙しい」とか「めんどくさい」で避けてたせいか、今じゃ放置である。


学生以来だな、泊まりで出かけるなんて。


水兎は嬉々としながら片付けをしている。もう明日から店を暫く休業し、半ば強引に明日は旅行の買い出しとやらに出かけることになった。水兎の希望で。


「明日10時に神月駅前に集合ね。寝坊とかめんどくさいなんて言ったら、黒羽さんのおごりで昼食ね。あとあとお菓子でしょー」


もう絶対俺が遅れてくる前提か。


明日は絶対負けられない。ただでさえ俺のお金は作家仲間の飯代で消えてくからな。何故か俺がおごることになっている、俺の知らないところで。


そう強く決意したのはいい。
< 8 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop