今宵、君と月の中で。
正直、無駄な時間だ、と途中から思っていた。


つまらない雑談の中で集中できるはずもなくて、テスト勉強は途中から捗っていなかったから。


こんなことなら帰ってひとりで勉強するか、早めに塾に行って自習室で勉強している方が確実に捗っただろうし、塾の自習室ならわからない問題を先生に教えてもらうことだってできた。


私が時間を割いても本人たちにやる気がなければ捗るわけがないのだから、それなら自分のために時間を使いたかった。


こんなことになるってわかってたら、断る理由を考えたのに……。結局、ほとんど喋ってただけじゃない。


そんな気持ちからため息が漏れた私は、自分でも気づかないうちに不機嫌な顔になっていたのかもしれない。


不意に静まり返ったことに違和感を抱いて顔を上げると、四人の視線が自分に集まっていたことに戸惑った。


「どうしたの?」


控えめに尋ねた私に、グループのリーダー格の女子が微妙に笑みを浮かべた。


「いやぁ、松浦さん怒ってる?」


「え?」


「ほら、うちら頭悪いから全然進まなかったじゃん? だから、ムカついたのかなーって思ってさ」


半笑いの軽い口調に苛立たなかったと言えば嘘になるけど、そんな気持ちと戸惑いを押し退けて口を開いた。

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