サプライズ★フィナーレ
翔は、空に目を向けて私の話を聞いていたけれど、次第にやるせない表情を募らせていく。

でも伝えたい……
私の正直な気持ちを、聞いてほしいの。


「だから今日も幸せだった。……ありがとう。翔じゃなかったら、あんな素敵な私、引き出してもらえなかった。こんな充実感、達成感味わえなかった。翔のおかげ。……だから、翔じゃなきゃ駄目なの」


そして私の頭上の空を見続けたまま、瞬きの数を増やしていく。

やがて徐々にその数を減らし、大きく溜め息を吐くと、私の目の前まで歩み寄り、声を押さえ気味に話し出した。


「ごめん、もう二度とエリを撮ることはない。カメラの仕事は、これで最後だ。……けど、ありがとう。俺もエリだから受けた。最後に誰もが胸を震わすほどに美しい、エリの自信取り戻せる、そんな写真を絶対に撮ってやる! そう決めて臨んだんだ。俺史上最高のエリが撮れたと思う。……もう一度、俺の一番会いたかったエリにも会えた。……頼みきいてくれて、ありがとう」


涙ぐみながら、そんな悟ったような顔しないで……頼みきいたわけじゃないし、『俺の一番会いたかったエリ』って、何?


「じゃ俺らは、夜の便で帰るから。楽しん来いよ。……幸せになれ」


翔は、最後に私が話す隙も与えず、オリーブのカーゴパンツに両手を入れ、穏やかに微笑みながら背を向け、早足で去って行った。
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