龍瞳ーその瞳に映るもの
「この店は買い物してる客にいちゃもん
つけるっていうのか?おぉ?」

「美香ちゃん、もういいから帰りなさい」

いつも元気な市原さんの声は暗い。

「啖呵切って逃げんのか?ねーちゃん」

バカにしたように挑発してくる男たち。

私はこの時、忘れていた。

私は美香ちゃんじゃない事、偽りの身分である事を綺麗に忘れていた。

おもむろに店内にある事務カウンターに
行き電話を手にした。
迷うことなく110にかける私を
誰もが目を疑うように見つめている。

「事件です」と伝え住所と店名を告げ
電話を切った私を睨みつけている男も
いる中、薄ら笑いしている男もいた。
< 100 / 306 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop