龍瞳ーその瞳に映るもの
3日目の夜待ち焦がれた梓から電話が鳴った。

『美緒』

耳から伝わる梓の出す振動が
美緒の名前を奏でる。

「梓、会いたいよぉ」

もっともったいつけようと思ってたけど
そんなの無理だ。

「今すぐ会いたいよ」

そんな余裕、美緒にない。

『俺も同じだ』

ほら、ほら、ほら!
駆け引きなんかしなくていいんだ。
思いあってる者同士、駆け引きはいらない。

「どこにいるの?美緒、会いたい」

『…』

流れる沈黙が切ない。
もしかして彼女といるの?
隣にいるの?

悪い事しか頭に浮かばない。

「一緒にいるの?」

『…あぁ』

「じゃあ、何で電話かけてきたのっ」

『声が聞きたかった、ごめんな』

ズルい、梓はズルい。
そんなのズルい。
何も言えなくなるじゃない。
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