先生のことなんて好きにならない!
「お前、その問題にどれだけ時間かけんだよ」
「だって…」
難しいんだもんと返そうとすると、先生がぐっと私に近づいた。
わ…先生の匂いがする。暑いからと開けられた第二ボタンと捲られた袖。
「あ、先生髪切りました?」
「…切ったけど」
襟足が短くなって少しさっぱりとした気がする。黒縁眼鏡の似合う黒髪で、なんだか真面目そうというのが見た目の印象。
「暑がりですか?」
「んー、まあ?…冬は寒がりだけど」
「へー」
マフラーとか巻くのかな。
先生は雑談をしつつその場にすとんと腰を下ろした。
机に肩と顔が見えるくらいで、私のペンを手に取り、印を付け始めた。
…教えてくれるのかな?