イジワル御曹司のギャップに参ってます!
私のラフ案をじっと眺めたあと。
「いいんじゃないでしょうか」
氷川はそう呟いた。

「え?」

まさかの一発OKに、私は素っ頓狂な声を上げる。

「ほ、本当に?」

「どういう意味です?」

「いえ……氷川さんらしくないなぁと思って」

私が恐る恐る本音を口にすると、氷川は眉に皺を寄せて、はぁぁぁぁ、と嫌味なため息を吐いた。

「私が今まで嫌がらせのためだけに、あなたに食って掛かってたとでも思ってたんですか?
別に、指摘するところがなければ、何も言いませんよ。
このテーマならば、クライアントが求めている世界観を表現することが出来る、そう思ったまでです。
まぁ、あとは実際のキャスト、演出、音声、照明、衣装等の腕次第なのでしょうけれど」

「そ、そうかぁ……」

「褒めているのに何故嫌そうなんですか、あなたは」

「……いえ、なんだか拍子抜けしてしまって」

もっとたくさん、ダメ出しを食らうかと思って、彼を説得する戦術を考えてきたのだけれど。
……勝負の赤下着まで身に着けてきたのに。
こんなにあっさりと受け入れられてしまうとは、ちょっとつまらない。

いや、まだまだだ。これで終わりではない。
とっておきの構想が、まだ手札として残っている。
これを受け入れてもらわなければ、今日のプレゼンの成果は五割減だ。
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