イジワル御曹司のギャップに参ってます!
涙を浮かべて私の胸元を揺する青山さんに、何の言い訳も思いつかなかった。
彼が『眼鏡』を外した原因――それはきっと、私が不甲斐なかったからだ。
私が自分のミスに捕らわれて、考えることを放棄していたから。

流星は、自分を――『氷川』を捨てることで、私を助けてくれたのだと思う。
何もしようとしなかった私の代わりに、本来私がするべきことを、自分の身を削ってまで代替してくれていたのだ。

「……ごめん」

それだけ言って、私は目を伏せた。
他にかける言葉なんか思いつかない。二人が長い間かけて築き上げてきたものを、私があっさりと壊してしまったのだから。

「謝られたくなんかありません!」

青山さんは私の胸元を弾き飛ばした。やるせない顔のまま、非常階段を飛び出していく。
結局またこの場所にぽつんと残されてしまったのは私で、いつになってもこの階段は、私の無力さを思い知らせてくれるんだなぁと、心底嫌になった。


このままではいけない。
いつまでも流星の言いなりになって、甘えているわけにはいかない。
流星のためにも、彼を大切に想う青山さんのためにも、自分自身のためにも。

私が、自分で、なんとかしなければいけないことなんだ。

この終わりの見えない謝罪行脚を成功させるために、必死に考えを巡らせた。
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