イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「まず、弾はこうやって詰めます。真っ直ぐ、強めにね。押し込んだ方がたくさん飛ぶから」

私の右耳のところで、彼が囁く。
また悲鳴を漏らしそうになって、私はなんとか耐え忍んだ。
ピクリと震えてしまったのを気付かれただろうか、彼が小さくクスリと笑った気がした。

「で、腕を思いっきり伸ばして構えて。的から近い方がいい。
下から突き上げるように、的の右上を狙うんだ。そうすれば倒しやすい」

流星の腕が私の両側をぐっと挟み込む。
密着した身体がすごく温かくなって、どうしようもなく緊張して、銃を持つ手が震えた。
その震えごと流星は私を力強く包み込む。

「いいよ。引いて」

言われるがまま、私は引き金を引いた。

パンッという音とともに、今度こそクマが吹っ飛んだ。
軽く跳ね上がって後ろに転げ落ちる。
お祭りピエロが鐘を鳴らし、ぴょんぴょんと踊りながら落ちた小さなクマを拾いに行く。

「当たった!!」

「上手上手」

ピエロからクマを受け取って、じゃあ今度は一人でやってみて、と、流星は私の身体を解放した。
私は今教わったことを思い出しながら、クマの隣に立っている小さなウサギの置物を狙う。

パンッという軽快な音と共に、ウサギの置物が後方へ倒れた。
勢いを殺し切れず、ころりと転がって台の下へ落ちる。
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