イジワル御曹司のギャップに参ってます!
「……流星と一緒がいいです」

慌てて取り繕う私に、ちょっと驚いた顔の流星が振り返る。

「……無理しなくていいよ。
そんな顔してないで。笑っててよ」

そう答えて、私の頬を指でトントンとつつく。

つつかれたって、そう簡単に笑うことなんかできないよ。

笑顔になるどころか余計に表情が硬くなってしまったような気がして、私はうつむいた。

「……じゃあさ」

落ちた視線の先に、彼の左手が現れて、驚いた私は彼を見上げる。

「繋いでて、いい?」

「……」

いつも強引なくせに、突然謙虚にお伺いを立ててきて。
困惑しながらも頷くと、それを確認した流星は、私の右手を優しく握った。


緊張はしているものの、手を繋ぐことを前ほど嫌だと感じていない自分に驚いた。
以前は少しでも男性に触れられただけで、固まって動けなくなってしまっていたのに。
市ヶ谷くんや流星に散々手を繋がれたせいで慣れたのだろうか。
だとしたら、これもひとえに彼らのスパルタ教育のお陰ということになるのだが――

私の手を引き一歩前を歩く流星の横顔を見上げながら考える。

あるいは。
この『流星』という人物に触れられることを、身体が、心が、そこまで嫌がっていないのかもしれない。

ときたま流星は、こちらの様子を伺うように振り返って、小さな笑みを投げかけてくる。
そのたびに、私の心の中には火が灯ったような、熱くてむずがゆい不思議な感覚に襲われる。
けれど、それは決して嫌な感じではなくて――

――もう少しなら、繋いでいてもいいかもしれない。

初めて、そんな風に思うことができた。
< 92 / 227 >

この作品をシェア

pagetop