『ココロ彩る恋』を貴方と……
兵藤さんは河井さんに勧められないと気づかないくらい、独り暮らしの生活に慣れてしまっているようだ。

あの家に私が来る前は、きっと通っていた家政婦さんとも一緒に食事をしなかったんだ。


(私が初かな?そう思うとハッピーだな〜〜)


どうにもあの小さく吹き出した笑いが忘れられなくてニヤける。

ほんの少しだけど、彼の心に寄れた気がした。


(同じ物食べるなんて夫婦みたい〜〜!)


「きゃーっ!」とバカみたいにはしゃいでしまった。

ザブン…とお湯から上がり、お風呂場を出たところで電話の音に気づいた。


「は〜〜い!」


バスタオルを巻いたままで部屋に置いてあるケータイを取りに行く。

『森元家政婦協会』の表示を見て、ドキン…と鼓動が走った。


(まさか、契約終了……?)


今日のは最後の晩餐だったとか?

それで一緒に食べていいとか言われた?


(そんな……)


出るのが怖くなってしまった。

それでも知らん顔をしていたらプロじゃなくなる。



「も…もしもし……」


どうか違いますように…と、祈りながら声を出した。

電話口の向こうから聞こえてきた声の主は、ホームアニメのお父さんに似ている所長さん。


「紫音ちゃんかい?」


ドクン…と胸が騒ぐ。


「は…はい……」


どうか、いい知らせでありますように。


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