『ココロ彩る恋』を貴方と……
(はぁ〜〜、空しい……)


心を閉ざしていると言うよりも、これは瞳を閉ざしている様なもんだ。


「兵藤さん、何を見てるんですか?」


声をかけても戻ってこない返事。

人形に話しかけているみたいで、私はついイラついてしまった。


「襲いますよ」


普通は男性が女性に手を出すんだろうけど。


「いいんですか?キスしても」


自分からはキスもしたこともないけど。

息が触れ合うくらいまで寄ってみても、彼の体はピクリともしない。

まるで呪文の掛かった人みたいに微動だにしない。


「目覚めて…」


そして、私を見て下さい。


祈りながら掠った唇に気づいて離れた。

上唇の先がちょんと触れ合っただけなのに……



(バカ紫音!何やってんの!)


相手が反応しないからってやり過ぎた。

こんなことをしたのがバレて此処へ通えなくなったらおしまいじゃない。


さっと唇を手で覆った。
この掠った感触だけを思い、今日1日頑張って働こう。


「仕事しないと」


兵藤さんから離れて、後ろを振り向いて立ち上がる。


「あれ…?」


なんだろ。視界が回…る……


「満仲さんっ!」


兵藤さんの驚く声がした。

変だな。さっきまで私のこと気づきもしなかったよ…ね……


「ひょうどう…さ……」


ごめんなさい。

不意にキスしてしまってーーーー。



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