『ココロ彩る恋』を貴方と……
「お…おはようございます!」


反射的に声をかけ、無言で中へ入ってくる人を見た。

声をかけようとした彼が口籠り、視線が服を捉えている。


ゴクン…と唾を呑んで仰いだ。

兵藤さんの気持ちを考えると、居た堪れなくなったけれど………


「ゆ…昨夜はすみませんでした。今朝は調子が戻ってきたのでご安心ください!」


明るい口調で話しかけた。ハッとするように目を向け、兵藤さんの口が動く。


「そうか…良かった…」


「は、はい」


返事を返しながら泣きそうになってしまった。

その良かった…は、私に対して言われた気がしなくてーー。



耐えきれなくなって目を伏せた。

悲しみの淵にいる兵藤さんと対峙できるほど、今の自分には体力がない。


「河井さんからも聞いたと思うけど、今日はこのまま此処で休んで。しっかり寝て休養していいから」


「……はい」


済まないけど、本当にそうさせて貰おう。彼の目に留まるのはそれからでもいい。


「…これ脱いだ服?洗濯するよ」


「ええっ!」


「着替えがないと困るだろう」


「えっ!あの、ちょっと、兵藤さ……!」


止める隙も与えず拾い上げ、持って行かれる。昨夜は体が重くて洗うのは後にしようと思い、丸めて置いてたのがいけなかった。


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