『ココロ彩る恋』を貴方と……
あまり美味しくもない料理を「美味い」と言ってくれたり、お替わりまでしてくれた。

今でも時々一緒に食べようと言ってくれる。
けれど、食べた後の悲しさが募るから、あれ以来同席は遠慮している。


その時の兵藤さんは何だか少し寂しそうな表情を見せる。

きゅんと胸の奥が痛みながらも、踏み込むのは止めようと決めた。



……その日もいつものようにスーツを着こなした人が食事室の椅子に座っていた。

明日が最終日になることを言い出せずに出勤していた私は、カラ元気を振りまいて挨拶した。


「おはようございます!」


無駄に明るい笑顔を浮かべて入ると、早起きの苦手な芸術家の彼は、欠伸を噛み殺しながら返事してきた。


「……おはよう。満仲さん」


何だかお疲れのご様子。


「個展が盛況で忙しそうですね。毎日早起きだし…大変そう」


リクエスト通りの白い料理を出しながら話す。大きな欠伸を繰り返しながら兵藤さんは、うん…と首をうな垂れた。


「…まぁね……」


またしても欠伸をしている。早起きが苦手なのに会場には行かないといけないなんて苦痛そうだ。


「しっかり食べてって下さい。忙しい時は体力が要るので」


下手くそなりにレシピを調べて作った。眠そうな兵藤さんの口に、少しでもいいから合えばいいんだけど。


「いただきます」


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