『ココロ彩る恋』を貴方と……
北風が吹き始めた11月半ば、兵藤さんの個展が始まった。

初日から盛況らしく、おかげで個展が始まってからこっち、兵藤さんが家に居ることは少ない。

外食も多いようで、私が食事を作る機会も減っていた。


(……外ではどんな食事をしているんだろう)


単色志向の彼も、外では仕様がなくカラフルな物を食べているのではないか。

会場にいるスタッフ達とも食べるだろうし、絵を買ってくれたお客さんとの会食もあるだろう。


毎日きちんとスーツを着こなして出かけて行く。

同じ様な格好で出勤してくる私と違って、彼は別人の様な出で立ちでいる。


(服装はギャップあるけど、外見のカッコ良さは変わらないよね)


透明度の高い、澄んだ瞳も変わらない。

その瞳に映る女性も変わらず彩さんだけで、彼の目には誰も留まったりしない。


(そんなの前からわかってたことだけど……)


先月の末に家政婦の交代をお願いしてから3週間、もうすぐ私はこの家を去る。

後任は所長さんの奥さんが引き継ぐことになっているから、何も心配せずに任せられる。

最初のうちは奥さんも兵藤さんの食事に驚くかもしれない。

私には難しかった一色のみの食事作りも、奥さんなら簡単にこなしてしまうだろうと思う。


(レパートリー少なくて大変だったけど、兵藤さんはいつも優しかったな……)


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