『ココロ彩る恋』を貴方と……
その度に所長さんには迷惑をかけている。
だから、今回もきっと同じ理由だろうと思い、あっさりと交代を了承してくれたんだ。
(このまま奥さんと代わろう。私と交代したことを奥さんの口から告げて貰えばいい)
食事を終えた兵藤さんを送りに玄関先までついて行った。靴を履く後ろ姿に、切なさが降り積もっていく……。
「行ってらしゃいませ」
これまでも同じ様に言ってきた言葉。帰ってきてね…の意味を込めて言っていたけれど……
(今日は『さよなら』みたいな気持ち……)
靴を履き終えた兵藤さんが振り返ってドキッとした。私の考えていることが、彼に伝わったのかと思った。
「言うの忘れてたけど、今夜ホテルに泊まりなんだ。明日は会場でパネルディスカッションとか言うのをしないといけないみたいで、その打ち合わせが夜にあるから」
「…そ…そうなんですか」
明日が最後なのに会えないのかと思うと焦ったけど、それを口に出す訳にもいかず口籠った。
「戸締まりだけよろしくお願いします。行ってくるから」
初めての「行ってくる」を耳にした。それが何故か、永遠の「さよなら」にしか聞こえなかった。
ぎゅっとエプロンを握って頭を下げた。
ドアの閉まる音を聞いて、パタタ…とスリッパの上に雫が落ちる。
(兵藤さん……どうか気をつけて……)
だから、今回もきっと同じ理由だろうと思い、あっさりと交代を了承してくれたんだ。
(このまま奥さんと代わろう。私と交代したことを奥さんの口から告げて貰えばいい)
食事を終えた兵藤さんを送りに玄関先までついて行った。靴を履く後ろ姿に、切なさが降り積もっていく……。
「行ってらしゃいませ」
これまでも同じ様に言ってきた言葉。帰ってきてね…の意味を込めて言っていたけれど……
(今日は『さよなら』みたいな気持ち……)
靴を履き終えた兵藤さんが振り返ってドキッとした。私の考えていることが、彼に伝わったのかと思った。
「言うの忘れてたけど、今夜ホテルに泊まりなんだ。明日は会場でパネルディスカッションとか言うのをしないといけないみたいで、その打ち合わせが夜にあるから」
「…そ…そうなんですか」
明日が最後なのに会えないのかと思うと焦ったけど、それを口に出す訳にもいかず口籠った。
「戸締まりだけよろしくお願いします。行ってくるから」
初めての「行ってくる」を耳にした。それが何故か、永遠の「さよなら」にしか聞こえなかった。
ぎゅっとエプロンを握って頭を下げた。
ドアの閉まる音を聞いて、パタタ…とスリッパの上に雫が落ちる。
(兵藤さん……どうか気をつけて……)