『ココロ彩る恋』を貴方と……
「すみませんでした……」と私に謝った雇い主は、何を考えてあんな行動に出たんだろうか。
食べ終わった後は反省しているように見えたけど、今はこの広い家の何処で何をしているんだろうか。

さっきはたった10分足らずで、私のしていた仕事を蔑ろにする行動を起こしていた。
思えばその違和感は、ここへ面接に来た時から感じていた。

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『どうぞ』


チェーンキーを外され中へと通された。
前任役の家政婦さんがいなくて、兵頭さん自らが玄関まで迎えにきてくれた。

応接室という名の部屋へ入るよう促されて足を入れたものの、一瞬ウッ…とくる様な臭いに息を止める。



「……あれも思うに、絶対に空気の入れ替えをしてなかったんだろうなぁ」


楕円形のテーブルの上は一応拭かれた形跡があった。
でも、それは本当に上の部分を拭いただけで、テーブルの縁は見事に埃や汚れが付いたままになっている。

「汚部屋」と言っても過言ではない雰囲気を感じて、何か変だな…と思ったんだけど……。



『俺は家政婦なんて必要ないよ?』


サラリと履歴書に目を通した人が言った。
私は協会からここへ行くよう言われて来てるんだから、必要ないと言われても困る。だから……


『でも、家政婦協会に申し込まれたのでしょう?』


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