『ココロ彩る恋』を貴方と……
登下校を支援するために車を出してやることが多かった。その時に見かけられ、評判になっていると言われた。
『こうして見るとアキラ君の目って本当に綺麗だよね。赤ちゃんみたいに黒目が大きくてツヤツヤしてる』
顔を近づけてくるから戸惑った。
年頃の子がそんなふうに接近する時と言えば、どうしてもいやらしい事を連想してしまう。
『…寄るなよ』
そう言って押し返した。
『何よぉ、ケチ。いいじゃん、見るくらい!』
頬を膨らませて怒っていた。
男の気持ちを何も知らないガキだと、呆れることが多かった。
二十歳になる頃には、彩の目は限られた部分しか見えない状態にまで悪くなっていた。
それでも明るさを無くさず、作業所へと通っていた。
その頃の俺は駆け出しの版画家として売れもしない版画を掘り続けている毎日だった。
掘っても掘ってもウダツの上がらない作品ばかりで、いっそ止めてしまおうかと思っている頃だった。
ある日の午後、部屋の中で版を掘っていたら、彩が俺の所へやって来て……
『新しい作品?今度はどんな感じの?』
見える範囲が少ないせいで、身を乗り出したり仰け反ったりする。
こっちはそれが邪魔で仕様がなくて、『あっちへ行け!』と声を上げた。
ビクッとなった彩が濁った眼差しを俺に向けた。
普段は何も思わないその目も、この時ばかりは薄気味悪く感じた。
『こうして見るとアキラ君の目って本当に綺麗だよね。赤ちゃんみたいに黒目が大きくてツヤツヤしてる』
顔を近づけてくるから戸惑った。
年頃の子がそんなふうに接近する時と言えば、どうしてもいやらしい事を連想してしまう。
『…寄るなよ』
そう言って押し返した。
『何よぉ、ケチ。いいじゃん、見るくらい!』
頬を膨らませて怒っていた。
男の気持ちを何も知らないガキだと、呆れることが多かった。
二十歳になる頃には、彩の目は限られた部分しか見えない状態にまで悪くなっていた。
それでも明るさを無くさず、作業所へと通っていた。
その頃の俺は駆け出しの版画家として売れもしない版画を掘り続けている毎日だった。
掘っても掘ってもウダツの上がらない作品ばかりで、いっそ止めてしまおうかと思っている頃だった。
ある日の午後、部屋の中で版を掘っていたら、彩が俺の所へやって来て……
『新しい作品?今度はどんな感じの?』
見える範囲が少ないせいで、身を乗り出したり仰け反ったりする。
こっちはそれが邪魔で仕様がなくて、『あっちへ行け!』と声を上げた。
ビクッとなった彩が濁った眼差しを俺に向けた。
普段は何も思わないその目も、この時ばかりは薄気味悪く感じた。