『ココロ彩る恋』を貴方と……
ファミリーはいても孤独
赤い食材を前にして、私の顔は火照っていた。


(…よりによって、赤い物食べたいとか言う?)


これって絶対に意地悪なんじゃないだろうか。有名な版画家による家政婦イジメみたいに思う。

ついさっき、偶然とは言え私の胸を鷲掴みにした兵藤さんは、キッチンの床に座り込んでいる私の所へやって来て。


「すみませんけど、何か作ってもらえると有り難い」


こっちは心臓がバクバクと鳴っているのに、そんなの関係ない様子で言っている。

その冷静な眼差しには私が映っていても、家政婦としての姿しか映っておらず……。


「か…畏まりました」


狼狽えながらも何とかプロとしての意地を見せた。

兵藤さんはホッとしたように笑って、「赤い色の物を頼む」と指定してきた。



「……あれって、絶対に私の顔色から判断したよね!?」


違うかもしれないけど、そうだと思っておきたい。

あんなにきっちりと胸を掴んだ方も、何らかの照れがあったと思いたい。


「よしっ!今日はリベンジするぞ!」


この間食べてもらえなかっら海老ピラフをまた作ろう。
きちんとトマトを湯むきして、お米にの中に入れて炊くんだ。


「赤の中にはピンクを混ぜちゃいけないのかな〜〜」


ピンク色の食材といえば少ない。
桜でんぶと紅白かまぼこの赤くらいしか思いつかないけど。


「兵藤さんって、子供の頃から単色志向なのかな」


そう呟きながら自分の幼い頃の記憶を掘り起こしていたーー。


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