ラティアの月光宝花
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「まあ、どうしたのです、セシーリア様。そんなに眼を真っ赤に腫らして」

アメリアは、セシーリアの部屋へ入るなり驚いて立ちすくんだ。

「……アメリア。私、朝食は要らないわ。お父様とお母様には少し熱っぽいだけだと伝えておいて。医者も必要ないからって」

寝台からアメリアを少しだけ見つめ、すぐに俯いたセシーリアにアメリアは歩み寄ると、床に膝をついて彼女の手をそっと握った。

アメリアにはセシーリアが何も言わずとも、この涙の理由が分かっていた。

それは、病弱であったセシーリアの母、ラティア女王の代わりにセシーリアの傍を片時も離れず、身の回りの世話をし、育ててきたからこその業であった。

アメリアは確信していた。

17歳になったセシーリアは、恋をしているのだと。我が子のように愛し、大切に育てたという事実を差し引いて見ても、セシーリアは息を飲むほどに美しい。

整った顔にありがちな冷たさは微塵もなく、性格から滲み出る愛くるしさが、見るものを魅了してやまないのだ。

ついこの間まで子供だと思っていた身体はいつの間にか成長し、伸びやかな肢体は美しい。

その上、絞り上げたようにくびれた腰は同性から見ると憧れであり、異性から見ると悩ましいものであるに違いなかった。
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