タタリアン

　ケヤキの根の周りを掘る作業が
終わり、太くむき出しの根を作業
員が切り始めた。
「今日はこの作業で終わりじゃ
が、いいか？」
　佐吉は作業の進み具合を見て翔
太に言った。
「そうですか。後はいつになりま
す？」
「このままで２、３日様子を見る
しかない」
「２、３日か。まあ、しかたない
な。ご苦労様でした」
　翔太は疲れた笑みを浮かべた。
そして警察官に合図を送った。
　警察官が無線で連絡すると、し
ばらくして大型バスのような護送
車が現れた。
「じいさん達には念のため、あの
車で寝泊りしてもらいたいんだけ
ど」
「しかたないの」
　佐吉は翔太のボロボロの体を見
て従うことにした。
「しばらく我慢して下さい」
　翔太が申し訳なさそうに言うと
佐吉は手を少し上げて応え、作業
員達と護送車に乗り込んだ。
　翔太は次の作業が始まるまでパ
トカーで警戒することにした。
　パトカーの後部座席で横になる
翔太。
　脚が伸ばせないので窮屈だっ
た。
　運転席の警察官は時間になると
交代して警戒した。

　真夜中。
　翔太の乗ったパトカーの後ろか
ら謎のレッカー車がやって来て、
牽引している黒焦げの自動車をパ
トカーにぶつけて走り去る。
　後部座席で横になっていた翔太
は慌てて飛び起き、パトカーは後
を追った。
　他のパトカーも加わってカー
チェイスが続いた。しかし、どう
しても停車させることができな
い。
　翔太の乗ったパトカーがなんと
か見失わず、謎のレッカー車の通
り過ぎたカーブを曲がると、遠く
で謎のレッカー車が停車してい
た。
　パトカーが近づくと猛スピード
で走り去った。
　完全にからかわれている。
「護送車の所に行ってくれ」
　翔太はパトカーを護送車に向か
わせた。
　佐吉の乗った護送車にはパト
カーが１台、警護していて無事
だった。