タタリアン
 謎のレッカー車は翔太を待って
いるかのように、ゆっくりと走っ
ていた。
 翔太はパトカーを謎のレッカー
車が牽引している黒焦げの自動車
の後ろにぶつけた。
 徐々にスピードを上げていく謎
のレッカー車。
 翔太はレッカー車の横に出て並
走しようとアクセルを踏んだ。す
ると謎のレッカー車は横道に曲が
り、さらにスピードを上げた。
 曲がる瞬間、黒焦げの自動車が
翔太のパトカーに接触し、翔太は
急ブレーキをかけた。
 スピンするパトカー。
 翔太はなんとかパトカーの態勢
を立て直し、横道に入って後を
追った。しかし、レッカー車はも
うどこにもいなかった。
「くっそ、バカにしやがって」
 翔太は、窓を開けて顔を出し、
「殺すんならさっさと殺せー」
と叫んだ。

 翔太が元いた場所に戻って来る
と、警察官と女の子が呆然として
立っていた。
 翔太はパトカーを降りると警察
官に聞いた。
「どうした?」
「この子」
 翔太は女の子を見たが普通のど
こにでもいる子にしか見えない。
「なに?」
「触ってみてください」
 翔太は女の子を触った。すると
皮膚の感じは人間と同じだが、骨
が無いようだった。
 少し力を入れて触るとスポンジ
のような感触で体がつぶれる。
 体中どこを触っても骨がなく、
シュワシュワっとつぶれてしま
う。
 手を離すと元に戻った。
「何これ?」
 翔太は気味悪そうな顔をした。
「人形でしょうか?」
 警察官が質問に質問で返した。
「でも生きてるみたいに動くし、
やわらかいロボット?アンドロイ
ド?」
 翔太と警察官の驚きをよそに無
邪気にねだるような顔をする女の
子。
「お願い。返して」
「喋った!」
 突然、女の子が喋り驚く翔太。
 警察官は固まる。
「お願い。返して。お願い。返し
て。お願い。返して」
「ちょちょちょっと待った」
「……」
「何を、返して、欲しいの?」
「……」
「あれ、どうしたんだろう?」
「お願い。返して。お願い。返し
て。お願い。返して。お願い。返
して」
「わ、わ、分かった」
 翔太は混乱しながらもとりあえ
ず女の子をケヤキの所へ連れて行
くことにした。
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