甘い恋じゃなかった。




そしてあっという間に焼肉当日。日程は桐原さんの仕事の休みに合わせて水曜日に設定された。

定時で仕事を切り上げた私たち3人は、職場からそのまま焼肉屋へと向かう。



「ていうか」



帰りの人々で混み合った車内で、鬱陶しそうに前髪をかきあげた莉央が不満そうに言った。



「いくらデザートがおいしいからって、こんなに遠いお店にしなくても。もっと近くにいい焼肉屋いっぱいあるのに」



桐原さんを誘い出すために使った、専属パティシエがいる焼肉屋、というのは嘘ではない。ただ私たちの生活圏内からは結構遠い。

莉央と牛奥には無理を言ってそこで承諾してもらった。どうしても私がそこのデザートを食べてみたい、ということにして。



「まぁ仕方ねーよ、小鳥遊ケーキバカだし。俺も行ったことない店興味あるし」



笑顔でフォローしてくれる牛奥。こういう何気ない優しさが社内の女性の心を鷲掴みにしているのだろうか。



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