甘い恋じゃなかった。
夜。
昨日は遅くなってしまったので、普段よりもだいぶ早くに布団へ潜り込んだ。
…もしかしたら、帰ってくるかもしれない。
そう思って、いつも通り玄関のチェーンはかけないでおく。
…帰って、くるのかなぁ。
目を瞑る。…なんだか今日も当分眠れそうにない。
そう思ったとき、
ガチャガチャッ…
足音と、玄関の鍵を開ける音がして思わず身を起こした。
「桐原さ…」
立ち上がりかけて。
気づく。
…隣の部屋だ。
ペタンと座り込んで、自然に漏れたため息。
…何してんだろ、私。
一瞬期待した。桐原さんが帰ってきたんだって。
私桐原さんに、帰ってきて欲しいって、思ってる?