甘い恋じゃなかった。




夜。


昨日は遅くなってしまったので、普段よりもだいぶ早くに布団へ潜り込んだ。



…もしかしたら、帰ってくるかもしれない。



そう思って、いつも通り玄関のチェーンはかけないでおく。


…帰って、くるのかなぁ。




目を瞑る。…なんだか今日も当分眠れそうにない。



そう思ったとき、




ガチャガチャッ…




足音と、玄関の鍵を開ける音がして思わず身を起こした。



「桐原さ…」




立ち上がりかけて。



気づく。




…隣の部屋だ。





ペタンと座り込んで、自然に漏れたため息。




…何してんだろ、私。



一瞬期待した。桐原さんが帰ってきたんだって。




私桐原さんに、帰ってきて欲しいって、思ってる?




< 244 / 381 >

この作品をシェア

pagetop