甘い恋じゃなかった。





不思議だ。



桐原さんの脅しに屈し嫌々で始まった同居生活。


はじめは、早く出ていってくれないかと、そればかり思っていたはずなのに。




今は、桐原さんの帰りを待っている自分がいるなんて。








翌日。


仕事を定時で切り上げた私は、その足でカフェ・ミルフィーユに直行した。



昨日は結局桐原さんは帰ってこなかった。




もしかしたら、ミルフィーユも辞めているかもしれない。


そう思ったが、学校帰りらしい女子高生何人かに囲まれている桐原さんを見てホッとした。




…いた。

いつも通りだ。



いつも通り、ここに彼がいる。









私が入っていくと、
いつも通り威勢のいい店長の声。



そして桐原さんも顔を上げ…



女子高生に向けられていた営業スマイルが、私を見た瞬間消えた。



そして何事もなかったかのように女子高生へ視線を戻し、キャッキャウフフと楽しそうに会話を続けている。



…いや、私も一応お客なんですけど!?






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