甘い恋じゃなかった。





「ただいま…」


「おかえり明里!仕事終わるの結構遅いんだね」


「あーうん、まぁ…」



家に帰ると、お姉ちゃんが玄関までわざわざ出迎えに来てくれた。


部屋に入ると、テーブルに並べられた二つのオムライス。



「え、これ…」


「スープもあるよ。もうご飯にする??」


「ていうかこれお姉ちゃんが作ったの…?」



あはは、と朗らかな笑みを見せるお姉ちゃん。


「何言ってるの、当たり前でしょ。スープよそるね」


「あ、うん…ありがとう」



コートを脱ぐのも忘れて、思わずオムライスをまじまじと見つめてしまった。


だって初めてのことだ。お姉ちゃんの手料理を食べるなんて。



昔から友達が多く、外に出るのが好きで、友達とやれイタリアンやフレンチだと食べ歩いていたお姉ちゃん。


家事は苦手で、料理なんて作っているのなんて見た記憶がない。それが、



「料理上手だったんだね、お姉ちゃん」



このオムライス、すごく綺麗に作られてるし。

スープを持ってきてくれたお姉ちゃんにそう言うと、キョトンとした顔をした後、フッと吹き出した。



「何〜?そりゃ一応人妻だし。料理くらいするよ」


「そ、そっか」



人妻、ね…。



複雑な気持ちのままコートをハンガーにかけ、手を洗い、席に着く。



「いただきます」



そういえば、こうやってお姉ちゃんと二人で食卓を囲むのも、初めてかもしれない。



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