甘い恋じゃなかった。




「メリ〜ィ、クリスマ〜スッ!!」


そしてクリスマスの営業が始まった。


サンタ姿で街行く人に声をかけ、ケーキの試食を進める私。


「ん、おいし〜い!」

「クリスマスケーキってまだあるの?」

「はい!当日販売の分もございますので、ぜひ中でゆっくりとご覧になって下さい!」



反応は上々だ。



ふぅ、と店の中に目をやると、たくさんのお客さんで賑わっていた。


笑顔でホールの中をパタパタと駆け回るお姉ちゃんに、奥の厨房では店長と桐原さんが真剣な面持ちでケーキを作っているのが見える。


…仕事が終わったら待っとけって…思いつく用事は一つ。


私にはっきり言うつもりなんだろうか、お姉ちゃんとその…付き合うことになったって。


言われるその瞬間をイメージして、うわぁぁと項垂れてしまった。



今でさえこんな精神状態なのに、更に滅多打ちにされるのだろうか…お腹が痛くなったことにして帰ってもいいかな…


なんて考えていたら、母親に手をひかれた5歳ほどの子供がじ、と私を見ていた。



「ママぁ!変なサンタさんいるぅー!!」



変なサンタさん!!


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